テトスへの手紙 研究解読



第1章12節



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2000/10/ 5  第1章12節 UP



第1章12節

12節 クレテ人のうちのある預言者が「クレテ人は、いつもうそつき、たちの悪いけもの、なまけものの食いしんぼう」と言っているが、


 パウロはクレテ人について述べた「うそつき、たちの悪いけもの、なまけ者の食いしんぼう」という言葉を引用していますが、これは紀元前6世紀のギリシャの詩人エピメニデスの言葉を借りたと言われています。パウロはこのように強い調子の言葉を語って、福音を悪用して金儲けをしようとするクレテの偽りの教師たちを非難しています(1章11節)。これは、キケロ、リビ、プルターク、ポリュビオスなど、古代の著述家たちが語っているようにクレテ人は貧欲であるという言葉と一致しています。歴史的に見て、クレテ人という名前は不正直と同義語であるとみなされてきています。彼らの偽りが有名であったことから、Kretidzein(「クレテ人のように語る」または「うそをつく」)という動詞とKretismos(「クレテ人の行い」すなわち「うそ」)という名詞が生まれたことはその地方の人々にはよく知られたことであるようです。

 ある人々は、使徒パウロは自分の考え方を貫くために人々を非難したりはしないと語っています。しかしパウロの言葉を読むと、偽りの教えを教会に持ち込もうとする人々に非難を浴びせていることがよく分ります。彼の書いた手紙を見れば、このような邪悪に対して厳しくかつ強い調子で語るのを躊躇してはいないことも分ります。



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