ルカによる福音書 第22章研究解読



第22章44節



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1999/ 8/26  第22章44節 UP



第22章44節

44節 イエスは苦しみもだえて、ますます切に祈られた。そしてその汗が血のしたたりのように地に落ちた。


 ゲッセマネの園におけるキリストの苦悶は、その大きさにしても原因にしても、人間の心では計り知れないものです。しかしその中でも、キリストが死を恐れて苦しんでいたという考えは受け入れられません。彼にとって「死」とは、復活に先立つ過程であって、この世に来る前に住んでいた御父のもとへ勝利を得て、なおかつその当時受けていた以上の高い光栄の状態で戻っていくことでした。その上に、キリストは自分から進んで自分の命を捨てる力を持っていました。「人間イエス」は、救世主であり、また一人の人間として、これまでにこの世に生を受けた人が考えつくことのない重荷の下に、苦悶してうめきました。

 キリストにあらゆる毛穴から血が吹き出るほどの苦痛を与えたのは、肉体の苦しみでもなければ、心の苦しみでもなく、それは神だけが経験することのできる、身と霊の両方にかかわる霊的な苦痛です。どんな肉体的に精神的に耐えられる人であっても、彼の他にはそのような苦しみに耐えられないことでしょう。キリストは、「この世の君」、すなわちサタンが加えることのできるあらゆる恐怖に立ち向かって、これに打ち勝っています。悪の力に相対するこの最高の争いに比べれば、イエスのバプテスマ直後の誘惑に付随してきた苦闘も物の数ではなかったことでしょう。このことから言えることは、キリストは人間には理解できない、しかし実は現実的な方法によって、アダムからこの世の終わりに至るまでの人類の罪を引き受けたということです。



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