民数記 第6〜9章研究解読



第6章1〜21節
第8章23〜26節



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2006/ 7/15  第6章1〜21節 追加
2004/ 3/ 2  第6章1〜21節、第8章23〜26節 UP



第6章1〜21節

1節 主はまたモーセに言われた、
2節 「イスラエルの人々に言いなさい、『男または女が、特に誓いを立て、ナジルびととなる誓願をして、身を主に生別する時は、
3節 ぶどう酒と濃い酒を断ち、ぶどう酒の酢となったものは、濃い酒の酢となったものを飲まず、また、ぶどうの汁を飲まず、また生でも干したものでも、ぶどうを食べてはならない。
4節 ナジルびとである間は、すべて、ぶどうの木からできているものは、種も皮も食べてはならない。
5節 また、ナジルびとたる誓願を立てている間は、すべて、かみそりを頭に当ててはならない。身を主に聖別した日数の満ちるまで、彼は聖なるものであるから、髪の毛をのばしておかなければならない。
6節 身を主に聖別している間は、すべて死体に近づいてはならない。
21節 これは誓願をするナジルびとと、そのナジルびとたる事のために、主にささげる彼の供え物についての律法である。このほかにその力の及ぶ物をささげることができる。すなわち、彼はその誓う誓願のように、ナジルびとの律法にしたがって行わなければならない』」。


 ナジル人というのは、神に仕えるためやささげるためににその身を聖別する誓いを、自発的に立てる男女のことを言います。また、ナジル人になることは、ナザレの町の出身であることは関係ありませんでした。ナジル人は3つの誓いを立てることになっており、ぶどう酒や体に刺激のある飲み物は絶対に取ってはならず、この中にはいかなる形であってもぶどうからとったものは全部含まれています(3〜4節)。かみそりを頭に当てず、神に対する冠として髪の毛は自然に伸びるに任せておかなくてはなりませんでした(5節)。自分の家族のものであっても、死体には一切近づくことも禁止され(6節)、その生活も、あらゆる努力の結果も完全に、また特別に神にささげられました。

 このような聖別された生活は、大祭司の生活幾分類似した所がありました(レビ21章10〜12節)。誓いを立てた、あるいは親が子に代わってそのような誓いを立てたとした例としては、サムソンサムエル(サムエル上第1章11節)、バプテスマのヨハネの3人がナジル人として記録されています。場合によっては、こうしたナジル人の誓いは生涯に渡るものでしたが、ある特定の期間だけ誓いを立てることが頻繁に行われました。この場合、その期間が明ければその人は普通の生活に戻ります。新約聖書の中には、この誓いに関係していると考えられる場所が、使徒行伝18章18〜19節と同21章23〜26節の2つに見られます。

 しかしバプテスマのヨハネの場合は推測にしかすぎないもので、サムソンのようなナジル人ではなかったとする見解があります。それは、御使いガブリエルがザカリヤに約束した男の子には「ぶどう酒や強い酒をいっさい飲んではならない」と教えたこと、成人してから荒野の中に住んだこと、彼がいつも「らくだの毛ごろもを着物としていた」ことを考え合わせた結果、聖書の解説者や専門家は、このヨハネが「一生を神に捧げたナジル人」であったと考えるにすぎないからです。


確かに、現在の聖書にはどこを見てもバプテスマのヨハネをナジル人と呼んでいるところは見つかっていません。


 書かれていないにしても、果たしてヨハネはナジル人ではなかったと言えるのでしょうか。「ナジル人」とは「聖別された人」もしくは「俗界を離れた人」の意味であって、自分の誓願あるいは両親がかけた誓願により、ある特別な働きをするため、もしくは特別な生涯を送るために特別な任務を与えられて一生を神に捧げた人のことです。スミス聖書辞典にはこのように記されています。

「モーセの五書の中には、一生を神に捧げたナジル人について何も触れていないが、何日かの間ナジル人となるための規定は出ている(民数記6章1〜2節)。ナジル人がその身を主に聖別している間は、ぶどう酒を飲まず、ぶどうの実を食べず、また人を酔わせる飲み物は何でも飲んではならなかった。ナジル人はすべて頭の毛を切ってはならず、身寄りの者が死んだ時でもその死体に近づいてはならなかった。」

 一生を神に捧げたナジル人の名が聖書に登場する唯一の例は、サムソンの場合だけです。サムソンの母親は、その子の生まれる前から、ナジル人の守るべきいろいろな慣例を守るようにと神の使いから命じられていました。この場合ナジル人になるのは、生まれる以前に天界からの指示があり、生まれる前からその子は神に捧げられるナジル人になる運命となります(士師記13章3〜7、14節)。然るに、バプテスマのヨハネはその厳しい生活ぶりから見て自分から誓願をかけたか、また両親が誓願をかけたか、あるいは全く誓願をかけなかったのか、記されていないものからは確実なことは分かりません。いずれにしても彼は、ナジル人に要求されたすべての戒律を厳格に守っていたことは明らかです。

 サムソンとヨハネ、彼らに訪れた神の使いの言葉を比較してみましょう。



氏族名
出身地
場所 御使いの名 聖句 目的 共通点
サムソン
(紀元前1150年頃)
父マノア
ダン

ゾラ
(ヨシュア15章
48〜60節)
士師記第13章2〜5節 不思議  ここにダンびとの氏族の者で、名をマノアというゾラの人があった。その妻はうまづめで、子を産んだことがなかった。主の使いがその女に現れていった、「あなたはうまづめで、子を産んだことがありません。しかしあなたは身ごもって男の子を産むでしょう。それであなたは気をつけて、ぶどう酒または濃い酒を飲んではなりません。またすべて汚れたものを食べてはなりません。あなたは身ごもって男の子を産むでしょう。その頭にかみそりをあててはなりません。その子は生まれた時から神にささげられたナジルびとです彼はペリシテびとの手からイスラエルを救い始めるでしょう。 ペリシテ人からイスラエルを開放する
(この世的な開放)
@御使いの訪れと不妊の妻

A男の子が生まれると宣告される

B濃い酒等を飲まない

C父母や自分の誓願によるものではなく、生まれる前からの任命である
ヨハネ
(紀元前2年10月頃)
父ザカリヤ
母エリザベツ
父母共にレビ族
レビ

ユダ族に与えら
れた山地の町
(ルカ1章39節)
ルカ第1章11〜17節 ガブリエル  〜エリザベツは不妊の女であったため、彼らには子がなく、そしてふたりともすでに年老いていた。
 すると主の御使いが現れて、香壇の右に立った。ザカリヤはこれを見て、おじ惑い、恐怖の念に襲われた。そこで御使いが彼に言った、「恐れるな、ザカリヤよ、あなたの祈りが聞き入れられたのだ。あなたの妻エリザベツは男の子を産むであろう。その子をヨハネと名づけなさい。彼はあなたに喜びと楽しみとをもたらし、多くの人々もその誕生を喜ぶであろう。彼は主のみまえに大いなる者となり、ぶどう衆強い酒をいっさい飲まず、母の胎内にいる時からすでに聖霊に満たされており、そして、イスラエルの多くの子らを、主なる彼らの神に立ち返らせるであろう。彼はエリヤ霊と力とをもって、みまえに先立って行き、父の心を子に向けさせ、逆らう者に義人の思いを持たせて、整えられた民を主に備えるであろう。」
イエスに先立って地上で主の民を整える
(霊的な開放)


 この二人の出生は似たような環境にあったことが分かります。どちらも民衆を現状から救う、あるいは意識を改革するという重大な使命を持っていますが、決定的に違うところが見られます。サムソンは、ペリシテ人によって虐げられる環境から脱却させることが主な目的ですが、ヨハネの場合は全人類の救い主の前に供えられた大いなる布石であることです。つまり、ヨハネはナジル人サムソンよりも大いなる目的と力を持ってこの世に生まれており、単なるナジル人の枠ではなく、それ以上の称号に価するものです。よって、御使いはヨハネをナジル人として呼ばなかった、あるいは任じなかったと考えることができるでしょう。


バプテスマのヨハネはナジル人を超えた存在である、と定義される日が来るのかもしれません




第8章23〜26節

23節 主はまたモーセに言われた、
24節 「レビびとは次のようにしなければならない。すなわち、二十五歳以上の者は務につき、会見の幕屋の働きをしなければならない。
25節 しかし、五十歳からは務の働きを退き、重ねて務をしてはならない。
26節 ただ、会見の幕屋でその兄弟たちの務の助けをすることができる。しかし、務をしてはならない。あなたがレビびとにその務をさせるには、このようにしなければならない」。


 民数記第4章には、幕屋を運搬する際にレビ人が果たす特別な役割について書かれてあります。第8章のこの部分は、レビ人の務めと働きが記されてあります。レビ人というのは、アロンとその息子たちが聖なる儀式を執り行うときにその助けをするために与えられているので、レビ人の責任は幕屋の設営と撤去、清掃、木と水の運搬、そして兄弟たちが犠牲に使うための動物をほふることなどでした。レビ人は、幕屋を運搬する人々よりも5年早く、その務めを始めることがゆるされていました(24節、民数記4章3節)。

 50歳以降は、レビ人は「兄弟たちの務めの助けをする」ことになっていたので、アロンとその息子たちは幕屋に使用する器具の世話をしました(26節、民数記3章7〜9節)。こうした自主的な働きは、老いていく人々にとって大変な名誉となっています。



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