ヨハネによる福音書 第4〜6章研究解読



第4章9節



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2010/ 2/21  第4章9節 UP


 

第4章9節

すると、サマリヤの女はイエスに言った、
「あなたはユダヤ人でありながら、どうしてサマリヤの女のわたしに、飲ませてくれとおっしゃるのですか」。これは、ユダヤ人はサマリヤ人と交際していなかったからである。


 この当時ユダヤからガリラヤへ行く道は、途中でサマリヤを通っていました。しかし、多くのユダヤ人、特にガリラヤ人は、サマリヤ人と呼んで非常にさげすんでいた民の国を通って行くことを嫌って、遠くても回り道をしていました。ユダヤ人とサマリヤ人の間にあった悪感情は、ここ数世紀いよいよひどくなってきており、イエス・キリストの時代には非常に激しい憎悪にまで発展していました。

 サマリヤの住人は、イスラエル人とアッシリア、その他の民族との混血で生まれた人で構成されています。サマリヤ人がユダヤその他南北に隣り合わせた近隣の国や住民との間に起こるもめごとの原因は、サマリヤ人が自分たちをイスラエル人であると認めよと主張するところにありました。サマリヤ人はアブラハムの子イサクの子ヤコブが自分たちの祖先であると言って誇っていましたが、ユダヤ人はこれを否定していました。

 当時サマリヤ人はモーセの5書を持っていたと考えられており、これを律法の書として崇めていたとされています。しかし旧約聖書の一部として編集されている預言書、ホセア書13章16節の中に、サマリヤ人が神にそむいたという記述があって、これを原因としてユダヤ人はサマリヤ人を敬遠したとも考えられます。

 「サマリヤはその神にそむいたので、その罪を負い、つるぎに倒れ、その幼な子は投げ砕かれ、そのはらめる女は引き裂かれる。

 ユダヤ人にとって、当時のサマリヤ人は他のどの国籍の異邦人よりも汚れていた民として見ていました。この二つの国民の間にあった避けることのできない犬猿の間柄に起因する、極端な、ばからしくさえ見える色々な制約に目を留めると、どのくらいさげすんでいたかがわかります。

 まず、ユダヤ人の法廷ではサマリヤ人の証言は認めていませんでした。また、一時ユダヤ教ラビの権威者たちは、サマリヤ人が調理した食物を食べることは、豚の肉を食べることと同じくらい重大な罪であると考えていました。サマリヤの畑から出るものは直接土から生えて出るものであるから汚れがないとされていましたが、畑の産物でも一度サマリヤ人の手で加工したものになるともはや汚れたものとなってしまいます。こんな幼稚とも言える蔑みのおかげで、ぶどうや穀物はサマリヤ人から買ってもよいとされるも、サマリヤ人が造ったぶどう酒や粉は買うことができませんでした。



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