ダニエル書 第7〜9章研究解読



第8章



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2005/ 5/ 9  第8章 追加
2005/ 2/13  第8章UP
2001/ 4/14  序文UP


 7章は2章と同じく歴史的な描写です。続いて4つの帝国が起こり、それからの王国が立てられることになっています。2章ではおもに神の王国の政治的な側面について書かれていますが、7章は宗教的な側面に重点が置かれているようです。ここに述べられている獣は獰猛で忌むべき性格を備えた人々が住むこの世の状態を表しており、彼らは人殺しで堕落した人間であって人の肉を食したこともある、残忍な性格でした。しし、くま、ひょう、そのほか10の角を持つ獣などは、彼らの支配する「この世の王国」を表すものであるとダニエルは述べています。

 預言者たちは、1頭あるいは数頭の獣を見た言わずに、獣の姿または形を見たと述べています。ダニエルは実際のくまやししを見たのではなく、それらの獣の姿や形を見ています。訳語は、預言者が獣について語る部分において「獣」の代わりに「形」とするべきでしょう。ここで重要なのは、


聖書の預言者たちが示現に獣を見たというのは、何かを表象するものとしての形を見ている


ことです。また彼らは同時にそうした形、象徴の意味するものについての解き明かしを受けています。







第8章


 ダニエルがこの示現で見たことの多くは現在歴史上の事実となっていますが、旧約聖書にそれらの記載はありません。何故なら彼がこの章に記録したことの大半は、旧約聖書に記述が無い紀元前500年頃からキリストの時代までの間に成就したと考えられているからです。しかしながら旧約外典の第1マカベア書にはこの時代の出来事が記されており、ある程度の情報を得ることができます。

 ダニエル書第8章の示現は、7章に書かれている第2と第3の帝国のことに集中しています。二つの角を持つ雄羊はメデアペルシア帝国を象徴しており、角(第8章3節)はそのメデアとペルシア王国の2人の王を表しています(20節)。「後に伸びた(3節)」長い角は、後に同盟国を支配してメデア人よりも勢力を得るペルシア人を意味しています。この二つの角のある雄羊を「地に打ち倒し(7節)」た、雄やぎは、アレキサンダー大王とギリシア帝国を表しています。アレキサンダー自身はその権力の強さから、「大きな角(21節)」と表現されており、32歳という若さで死んでいます。彼については8節に、「その盛んになった時、あのおおきな角が折れて」と記されています。

 アレキサンダー大王の死後、4人の将軍が国を分けましたが、それは一つの角の代わりに生じた4つの角(8,22節)であると考えられています。その角のひとつから生じた「一つの小さい角(9節)」は、紀元前175〜164年にスリヤ(シリア)を治めたアンティオコス4世(エピファネス)を表すと一般に考えられているようです。彼はモーセの律法を守ることを大罪に定めて、ユダヤ人に厳しい迫害を加えました。この「一つの小さい角」について、ジョージ・レイノルズ及びジェーン・M・ショダールは次のように述べています。

 「この『小さい角』はアンティオコス・エピファネスを表すと古代記述者たちのほとんどは考えていたが、前述の『悪魔の教会』である『忌まわしい大教会』が、この預言者によって、預言の完全な成就に必要なものとして暗示されている可能性は除外できない。


マカベア家の時代のユダヤ人に対してアンティオコスがしたことは、『悪魔の教会』が
どの時代にも『キリストの教会』に対してしてきたことである。」


 アンティオコス4世は預言の内容に適合するかもしれませんが、それはサタンの力によって動き、「天の星」、つまり神の子たち(ヨブ38章7節、イザヤ14章13節、黙示録12章4節)を「投げ落」とそうとし、「君の君たる者」のキリストに対しても「高ぶろうとする(ダニエル8章25節)」人々の典型であるとも考えられます。アンティオコス4世が神殿の日々の犠牲を取り去り、神の至聖所である神殿を荒らしたことは明らかです。同様の出来事はキリスト降誕後のローマ時代にも起きています。ある教会役員はこれについて次のように述べました。

 「さて、その王国の後半に、ユダ国の背きが頂点に達したとき、ローマの勢力がユダ国を滅ぼし、エルサレムを占領し、毎日の犠牲をやめさせた。そしてローマの権力者たちはそれだけにとどまらず、後に力のある聖なる民、すなわち使徒や初期のキリスト教徒を殺害して滅ぼしたのである。」

 この預言がマカベア家の時代だけに限定されないことは、ダニエル8章19節にある2つの語句に記されています。「憤りの終わりのときに」は、「憤りの終わりの時代、すなわち末日、キリストの再臨前」を意味しています。さらに26節には、「これは多くの日の後にかかわる事だから」とも記されており、まさにキリスト再臨前の現在に言われていると考えてよいでしょう。



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